【授業内容】(方針・目標・内容) 政策というのは謂わば総合芸術だと思う。通常の学問分野は、幾つもの条件の下で思考実験を行う。管理実験である。ところが、政策という場では、通常の学問分野のスキルと論理を身に付けた人々が多数集まり自己を主張し、他者を否定し、そして合従連衡し、出し抜きし、妥協して政策を生み出す。考えてもみよう。社会が直面する幾多の問題のうち、なぜあるものだけが「公共的問題」として注目されたり、問題解決のための幾つもの選択肢のなかでなぜあるものが「選択」されて、「実行」されるのか。しかも、なぜ人々の間で食い違う「評価」を受けるのか。 こうした政策のダイナミズムを「政策過程」と呼んで、政策科学はその過程を分析するモデルを発展させてきた。でも、政策科学の目的は、モデル自体にあるのではなく、政策過程を通して明らかになる社会の仕組みそのものの解明であり、より良い社会の統治(ガバナンス)方式を探求することである。 ところで、日本型の政策形成の特徴は、医者と患者の上下関係に擬して「構造化されたパターナリズム(父権主義)」(米本昌平氏)と特徴づけられてきた。だが、官僚支配による中央集権的で公共事業中心の政策は、高度成長をもたらしたものの、様々な問題を招き、日本社会が逼塞してしまった。近年、そうした状況を打破するために色んな試みがなされているが、政府でも市場でもない第三の道、コミュニティ・ソルーションが、先進国のみならず途上諸国でも注目を集めている。 この講義の狙いは、日本型の政策形成がどのような特徴を持ち、それがいかにして形成されてきたのか。それを克服しなければならないとするなら、どのような道があるのか、を考える糸口を、日本各地のみならず世界各地での注目すべき人々の取り組みを紹介して、受講生に提供することにある。 相変わらず実証的政策研究すら程遠く構造的なパターナリズムを脱しきれぬ日本的政策形成過程の淵源を、総力戦体制論に求める議論を紹介して、associative democracy論の可能性を最後に示せればと思う。
【授業計画】
【前期】
【後期】
【教科書・参考書】 教科書:
参考書:
【講義内容関連リンク】
【成績評価】 平常点(授業感想・質問アンケート、エッセイ)50%、教場試験 50% 2003年度優秀エッセイから(タイトルのみ):
【履修・登録条件】
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